医療の変革は看護師から始まることもある

投稿日: カテゴリー: opinion

あなたはなぜチェックリストを使わないのか」という本があります。仕事Hack系の本かと思ったら全く違いました。医療や航空、建築業界など、ささいなミスが重大な結果を引き起こす可能性がある現場で、ミスを大幅に低減するしくみを導入し、それが絶大な効果を生み出していくまでに必要なアクションを、公衆衛生の専門家である著者が大変わかりやすく、豊富な事例を踏まえて書いている本です。

この事例の中には、現在の医療現場では当たり前のこととして定着しているものも多くあります。患者の容態を確認するためのバイタルサインチェック、中心静脈カテーテルを挿入する際の手順など。著者のガワンデ医師によれば、「実は、バイタルサインをチェックリストとして活用し始めたのは、医師ではなく看護師だった。(中略)そんな状況を変えたのは1960年台の看護師たちだった。看護師立ちが記録表を導入すると6時間ごとに(看護師が必要と判断すればもっと頻繁に)バイタルサインが確実に記録されるようになり、患者のおおまかな容態が定期的にチェックされるようになった」とのことなのです。

このように医療における手順を変えたり徹底することを実現するためには、チーム医療がそれぞれのメンバーの専門性を重んじる文化があって、誰が何をすべきかが明確になっていて、それを逸脱した場合にそれをきちんと指摘できる環境がある(しかも指摘に従う)ことがとても重要であろうことは容易に想像がつきます。これまでのやり方を変えるのは誰しも大変ですが、幸いなことに医療現場の目標は「患者さんのために」というところに集約できるので、「これを徹底すれば感染率が下がる」「これを変えることで安定したケアができるようになる」ことがわかれば、全員が同じ方向を向くことができるように思います。

本来この本は、どんな分野であってもチェックリストのようなアプローチが重大な結果を引き起こすミスを最小化できるということを伝えているのですが、医療における実例ひとつひとつがなるほど、とうなづける(長過ぎるチェックリストに作ったガワンデ医師本人がこれは使えないと投げ出した、という初期のケースなど)ものでした。

医師も、看護師も、医療従事者誰もが医療を変えるチャンスを持っているというのは、すごいことだと思います。